ようこそ、福島医大泌尿器科へ
随想録
臨床泌尿器科編集後記vol.73.No.3, 2019
中学校の卒業式の時に“ある人”からもらった手紙に「出会いがあれば別れもある。別れがあれば出会いもあるのです。」と書かれていたことを、ふと思い出しました。3月は別れの季節、4月は出会いの季節。さて皆さんはこの3月、どんな別れがあるのでしょうか?
かく言う私は、2つの大きな別れを経験します。1つ目の別れは、広島大学と岩手医科大学から当講座に国内留学していた2人です。東北地方の慢性的な医師不足に加え、東日本大震災に端を発した複合災害の影響により、いまだに福島県の医療は厳しい状況にあります。広島大学とは、放射線災害の学術的基盤として大学間の交流が進んでいることもあり、岩手医科大学とは、専門医プログラムを共有していることもあり、松原昭郎教授と小原 航教授のご高配により、若い先生を1人ずつ派遣していただきました。両教授には、苦しい福島の現状をご理解いただき、福島復興のためにお力添えをいただきました。また優秀な若い泌尿器科医が、家庭を犠牲にして見知らぬ土地に来てくれたことは、福島の医療を助けてくれたのみならず、異文化を持ち込んでくれたことにより、医局員には大きな刺激となり、思わぬ数々の相乗効果を生みだしてくれました。その2人が国内留学を終え、それぞれの母校に帰っていきます。
2つ目の別れは、医局秘書です。昨年当講座は開講50周年を迎えたこともあり、通常業務に加え、記念祝賀会の開催準備や記念誌の作成に至るまで、この1年の秘書業務は超多忙を極めました。医師になってこれまで接した秘書のなかで、最も優秀で信頼できると言っても過言ではない2人の秘書が、大活躍をしてくれました。そのうちの1人が医局を去ることになりました。彼女は社会福祉士と精神保健福祉士の資格を持っており、いずれは資格を生かした仕事への復帰を希望していました。この度彼女の希望がめでたく叶い、4月から現場に戻ることになりました。断腸の思いではありますが、彼女の新たな船出に心からのエールを送りたいと思います。そして今、4月に巡り合う新しい出会いを心待ちにしています。
さて、冒頭の手紙の話に戻ります。「出会いがあれば別れもある。別れがあれば出会いもあるのです。」実はこの手紙の送り主は、中学3年生の時に大失恋した女の子です。35年前の淡く切なく苦い思い出です。翌4月にどんな出会いがあったかは、皆さんのご想像にお任せすることにします。