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随想録

臨床泌尿器科編集後記 vol.73. No13 ,2019

「医師の働き方改革」により、医師の時間外労働は、上限が年1,860時間に設定されました。ただしこれは暫定処置で、2024年度からは原則月100時間未満、年960時間未満が上限とされます。厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」の報告書に目を通しましたが、各領域の専門家の先生方により、医師の労働に関して抱える問題点について十分な議論がなされています。しかし、様々な問題点もあると思いますので、そのうち2つだけ私見を述べさせていただきます。

1つ目は、医師の「労働」の定義です。大学病院の医師は診療だけではなく、教育、研究には従事しなければなりません。診療だけでも、医療の高度化、安全管理や医療倫理など、この十数年の間で業務は膨れ上がりました。それに加え教育においても、昨今の医学部教育改革により、特に医学生の臨床実習にかなりの時間を割く必要があります。研究も、始める前から書類の山で、研究する前にすでに疲弊してしまいます。しかし検討会では、診療に関する議論に比べ、教育や研究についての議論はほとんどなされていないようです。しかも、「労働」と「自己研鑽」の定義も一部不明確です。厚生労働省医政局のガイドラインによると、カルテ・診断書作成、委員会・会議、カンファランス、研修医教育などは「労働」として、自主的勉強会、学会参加は純粋な「自己研鑽」として定義されています。一方、手術見学、学会発表、論文作成、文献検索等は、二面性がある活動として曖昧になっています。労働時間を制限することによって、日本の医学研究の進歩が後退することはあってはならないことと思います。

2つ目はタスクシフトに関してです。厚生労働省は、認定看護師に加えて、特定行為に係る看護師の養成を推奨しています。しかし、思うように進んでいないのが実情のようです。個人的な意見としては、特定行為に係る看護師だけでは不十分で、Physician Assistantの養成を早急に進めるべきと思います。年々医療の高度化や制度の厳格化が進む中で、本来医師が行うべき診療の質の低下が懸念されるからです。

紙面の都合上、2つの問題点についてのみ愚見しましたが、その他様々な問題があると思います。私も医師の働き方改革には大賛成です。検討会がきちんとした議論をしていただいていることには心から敬意を表したいと思います。しかし年960時間未満の時間外労働の実現を5年後とするのであれば、上記を含めた各論の整備をスピーディに行っていただければと切に願っています。

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