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随想録

臨床泌尿器科編集後記 vol.74. No13 ,2020

本学も学生の講義が再開されました。先日大学1年生130人の前で、人体機能概論の講義をしました。毎年、福島県内の高校生に出前講義をしているためか、私のことをすでに知っている学生が10人ほどいたことは、モチベーションupにつながりました。私の講義を聴いたのは4回目という学生もいました。

毎年1年生への講義では、主に前立腺癌に対するロボット支援手術の話をするのですが、今回は2時間の講義時間をいただいたので、私の専門の1つである小児泌尿器科疾患に対する腹腔鏡手術やロボット支援手術の話も加えました。講義のあとに学生に感想文を書いてもらったのですが、小児医療に関する話に対する感想が多くみられ、正直その反響の大きさに驚きました。

「子供は手術の傷のことを意外にそんなに気にしていないという医師もいるが、親御さん、特に自分のおなかを痛めてわが子を産んだお母さんは気にしている」「手術時の傷がたとえ数センチでも、子供の成長とともに傷も大きくなり十数センチになることもある」「小児医療を行うということは、その子の人生を背負うという気持ちが必要」。

講義では、たくさんの冗談を散りばめ、常に学生を飽きさせないような工夫を凝らしているのですが、単に面白い人で終わらないように、いくつかの真面目なメッセージを何気なく送るようにしています。小児医療に携わる者として、日頃から思っている言葉を素直に発しただけなのですが、多くの1年生とっては、私の予想を超えて重い言葉だったようです。

私が医学部に入学した時より、最近の医学部の偏差値はかなり高いように思います。先行きが見えない不安定な世の中にあって、安定感を求めるために医学部を志す受験生も決して少なくないような気がします。成績が良いから、子供がかわいいからという理由だけで、安易に医学部や小児医療を志すことは、本人にとっても、患者さんにとっても不幸なことです。その思いが、1年生に少しでも伝わってくれれば、講義は大成功だったと思っています。

感想文を読むと、講義の中でもう1つ学生に大きく響いた言葉があったようです。「今後AI(人工知能)が進めば医師過剰時代が来て、医師も職を失うかもしれない。」入学したばかりの1年生には少々刺激が強すぎたようで、かなり不安をあおってしまいました。1年生は純粋です。これから先の医学部6年間、そして医師になってからも、その純粋さを忘れず一生懸命医学を学んで、立派な医師になってもらいたいものです。

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