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疾患のご説明

前立腺肥大症

前立腺肥大症とは?

前立腺は男性のみに存在する臓器であり、膀胱直下にあって後部尿道をとりまくように存在します。通常、前立腺はクルミ大位で15〜20ml程度の大きさですが、50歳を過ぎると肥大が始まります。病理学的には70歳以上になると、10人に7人以上の人に肥大がみられます。肥大症になると、前立腺の中を通る尿道が狭くなり(閉塞)、尿の出が悪くなるなどの様々な症状がでてきます。

前立腺肥大症の尿の出が悪くなるメカニズムには、機械的閉塞と機能的閉塞があります。機械的閉塞とは、肥大した前立腺組織により尿道が圧迫されて尿道が閉塞することです。また、機能的閉塞とは、前立腺にある平滑筋の収縮により尿道が閉塞することをいいます。

 

前立腺肥大症の症状

前立腺肥大症の症状は、蓄尿症状(トイレが近い、我慢がきかないなど)、排尿症状(勢いがない、時間がかかるなど)、排尿後症状(すっきりしない、切れが悪いなど)の3つに分けられます。最も典型的な症状は、排尿しようとしても出始めまでに時間がかかり、勢いが無く時間がかかることです。さらに進むと尿が全く出せなくなることもあります。これらの症状は飲酒、便秘、ある種の薬(風邪薬、安定剤、睡眠薬、アレルギー薬などの一部)で悪化することも前立腺肥大症の特徴の1つです。

 

診断

  1. 直腸診(肛門から指を入れての前立腺触診)
  2. 超音波検査

直腸内または腹部から超音波の機械を当てて、前立腺の大きさや形を調べる検査です。

  1. 腫瘍マーカー検査(採血によるPSA検査)

PSA(前立腺特異抗原)の血液検査により、前立腺がんの有無を調べます。
(詳しくは前立腺がんの項目を参照して下さい。)

  1. 尿流残尿測定検査(尿の勢い、排尿時間、残尿を調べる検査)

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図1 尿流残尿検査

図1Aは正常の尿の勢いのグラフです。図1B、Cは前立腺肥大症患者さんのグラフであり、山が低くなり(勢いが低下)裾野が広がった(時間がかかる)形になっています。

  1. 排尿記録

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図2 排尿記録用紙

排尿した時間と1回あたりの排尿量を24時間連続で記録します。頻尿や夜間頻尿の原因が1回排尿量減少か多尿か、あるいは両者の合併かを検討する際に有用です。

  1. IPSS(国際前立腺症状スコア)

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図3 IPSS(国際前立腺症状スコア)

IPSSは前立腺肥大症に対する症状質問票として一般的に使用されています。合計点数が0~7点,8〜19点,20〜35点をそれぞれ軽症、中等症、重症と評価します。また,QOLスコアは現在の排尿状態に対する患者自身の満足度を示す指標で、軽症(0〜1点)、中等症(2〜4点)、重症(5〜6点)に分類します。

  1. その他

腎臓の機能や形態と尿管の形態をみる静脈性腎盂造影や内圧尿流測定なども行われます。

 

治療

前立腺肥大症の治療は内科的治療と外科的治療があります。一般的に軽症の人は内科的治療を、薬物療法の効果のない人、重症の人は外科的治療が行われます。

@ 内科的治療
  1. α1-アドレナリン受容体遮断薬(ハルナール、フリバス、ユリーフなど)

前立腺の平滑、筋緊張に関係するα1アドレナリン受容体を阻害して、前立腺による機能的閉塞を減少させ症状を軽減させます。

  1. 5α還元酵素阻害薬(アボルブ)

前立腺を縮小させて、尿道の機械的閉塞を軽くします。

  1. 抗アンドロゲン薬(プロスタールなど)

前立腺を縮小させて、尿道の機械的閉塞を軽くします。

  1. その他

植物エキス配合薬(エビプロスタット、セルニルトンなど)
抗コリン剤(ベシケア、ステーブラ、バップフォーなど)
漢方薬(八味地黄丸、牛車腎気丸)
などの単独あるいは併用療法もあります。

A 外科的療法
  1. 経尿道的前立腺切除術 (TUR-P)

経尿道的前立腺切除術(TUR-P)は内視鏡を用いて肥大した前立腺を尿道から電気メスで切除する方法です。おなかを切る必要がなく、最もよく行われている手術法です。

  1. 経尿道的バイポーラ電極前立腺核出術 (TUEB)

バイポーラー電気メスを用いて腺腫を経尿道的に剥離・核出する手術です。

  1. 被膜下前立腺腺腫核出術

前立腺被膜下摘出術は開腹して前立腺を摘出する方法で内視鏡では切除困難な巨大な前立腺肥大症が適応となります。

  1. その他

高密度焦点式超音波治療温熱療法(HIFU)
レーザー療法(HoLEP、HoLAPなど)
尿道ステント留置術
など

当院ではTUR-Pと被膜下前立腺腺腫核出術を中心に行っています。また、高密度焦点式超音波治療温熱療法(HIFU)は、関連施設の公立藤田病院で治療を受けることが可能です。

 

参考文献

  • 図説 下部尿路機能障害:山口 脩、他
  • 前立腺肥大症診療ガイドライン:日本泌尿器科学会編
  • 日本排尿機能学会ホームページ
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