研究・学会活動
研究のテーマ
Oncology Research Group(オンコロジー・リサーチグループ)
腎癌基礎研究
腎細胞癌に対する治療法は腫瘍の摘除が最も確実であることは疑いありません。しかし、転移症例や進行癌の場合、治療の選択肢が限られてしまいます。これまでは有効な抗癌剤が存在しなかったのですが、近年sorafenibやsunitinibをはじめとした分子標的薬が注目を浴びており、一定の効果を示しています。しかし、それら分子標的薬の効果にも限界があることも判ってきております。一方、本邦では以前よりインターフェロンやインターロイキン2などのサイトカイン療法がよく行われており、稀ではありますが肺転移巣が消失するなどのCR例を経験することがあります。しかし、もとよりこのサイトカイン療法も有効率は高くなく、以前進行腎癌の治療には苦慮することが多いようです。
我々は、以前より腎癌における薬剤(サイトカイン、分子標的薬)耐性化の機序を解明すべく研究を重ねております。最近、私たちは腎癌におけるインターフェロン耐性にsuppressor of cytokine signaling 3 (SOCS3)が関与していることを見出しました。この事はインターフェロンによる腎癌細胞の増殖抑制効果から、インターフェロン耐性株と感受性株に分けその遺伝子発現レベルを解析した結果から判明いたしました。
このSOCS3の関与はsiRNAやoverexpressionプラスミドのtransfectionやヌードマウスを用いたin vivo studyで確認されました。これらの結果はCancer Sci, 2011 Jan;102(1):57-63.に掲載されております。現在この研究をさらに進め、分子標的薬耐性の機序、または臨床応用へ向けての研究を精力的に行っております。現在(2012年7月の時点)論文を投稿中であり、さらには新たな側面からの癌研究も進行中です。
膀胱癌の基礎的研究
近年、膀胱癌の化学療法としてGC療法など新たな抗癌化学療法が導入され始めましたが、浸潤性膀胱癌、転移性膀胱癌の治療成績はいまだ満足に足るものではありません。
また、筋層非浸潤性膀胱癌の治療経過中に浸潤性膀胱癌へと進展する症例も存在し、現在は再発リスクや進展リスクなどを考慮した補助療法が行われてます。そのような中、我々は膀胱癌の浸潤メカニズムを解明することで、今後、新たな治療のターゲットにならないかということを考え、日々研究に励んでおります。
現在、我々が注目しているのはG蛋白共役型受容体とその下流シグナルが膀胱癌の浸潤・遊走能や増殖能に与える影響についてです。血液や尿中に存在し、G蛋白共役型受容体をターゲットとしている物質に着目し、細胞株を用いた浸潤アッセイ、増殖アッセイを行っています。
今後は臨床検体を用い、Real Time-PCRや免疫染色にてG蛋白共役型受容体の発現を比較検討していく予定です。
膀胱癌細胞株を用いてアクチンフィラメントを蛍光染色 |
G蛋白共役型受容体を刺激するとlamellipodia(膜状仮足)が形成される |